尺度

すべての図面を実物と同じサイズ(現尺)で描こうとすると、長さが1mある製品の図面を描くためには1m以上の紙が必要になります。製品ごとにこのような用紙を準備したり、印刷するためのプリンターを購入したりするのは現実的ではありません。

また、大きさが2mmしかない製品の図面を現尺で印刷しても、インクで形状が潰れてしまって何が描かれているのかわからなくなってしまいます。

このようなことが起こらないように大きなものは縮小して、小さなものは拡大して図面を描きます。このとき、どれだけ縮小・拡大したのかを表すものが尺度となります。

尺度には実物と同じ大きさである現尺と、実物より小さくする縮尺、実物より大きくする倍尺の3つがあります。どれを選択するのかは製品の大きさや複雑さ、用紙サイズなどを考慮して、図面として一番見やすくなるものを選びます。

製品の複雑さを考慮する理由は、形状が複雑な製品は寸法の表示が多くなるので、その寸法を書き込む余白が必要になるためです。実際に、寸法を書き込んでいるときにスペースが無くなり、尺度を変更して寸法を入れ直すという作業を経験している人も多いです。

※CADソフトにもよりますが、尺度を変更すると寸法線の矢印も拡大縮小されたり、文字の位置がズレたりするためです。

尺度の注意点

JIS規格では推奨尺度というものが設定されていますが、中途半端な尺度でなければあまり気にする必要はないと思います。(中途半端な尺度 「4:3」や「1:1.7」とか)

当たり前のことですが、横方向と縦方向では同じ尺度を用いる必要があります。縦と横で尺度が違う場合、大きさや形状をイメージするのが困難になってしまいます。

私がお客様から預かった図面を見ていると縦と横で尺度が違うことに気づき、表題欄を見てみると「尺度 FREE」と書いてありました。「フリーって・・・」

細長いものである場合、縦と横の尺度を変えれば全体は見えますが、誤解を招く原因となります。このような場合は、途中を省略するか細かい部分を拡大図で示すことで、全体も細かい部分も示すことができます。

尺度の表し方

尺度はA:Bで表し、現尺の場合はA、Bともに1、倍尺の場合はBを1、縮尺の場合はAを1として示します。

その図面に用いる尺度は表題欄に示しますが、1枚の図面にいくつかの尺度を用いる場合には、主となる尺度だけを表題欄に示し、その他の尺度は、詳細図の上か下に示します。

尺度の選び方ですが、特に理由のない場合には推奨尺度を用いることになっていますが、用紙に対して図が小さ過ぎたり大き過ぎたりしなければ、あまり細かく気にする必要はないと思います。

昔は「A / B」という分数表記でしたが、現在のJIS規格ではこの分数表記は排除され、国際規格に合わせて「A:B」という表記が採用されています。個人的な感覚ですが、尺度に分数表記が使われていると少し古臭く感じてしまいますので、できるだけ分数表記は避けましょう。

推奨尺度
尺度
現尺1:1
倍尺
  • 50:1
  • 20:1
  • 10:1
  • 5:1
  • 2:1
縮尺
  • 1:2
  • 1:5
  • 1:10
  • 1:20
  • 1:50
  • 1:100
  • 1:200
  • 1:500
  • 1:1000
  • 1:2000
  • 1:5000
  • 1:10000

参考・関連規格
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