機械製図の基礎知識
なぜ図面が必要なのか
製品の複雑な形状や寸法などを言葉だけで伝えるのは困難です。もし伝えることができたとしても、認識の違いなどにより全く別の形状の製品が出来上がってしまうこともあります。また、依頼主 → 加工業者の営業 → 加工ラインの管理者 → 加工担当者 と伝わる過程で内容が変わってしまう危険性もあり、言った言わないのトラブルの原因となります。
このようなことが起こらないように、どのようなものを作って欲しいのかを図面として残す必要があります。
図面にはその製品を作るためのすべての要素を記載しなければなりません。つまり、その図面を見ただけでどのような製品を作ればよいのかがわからなければならないのです。
一般に、図面には以下の様な内容を記載する必要があります。
- 製品の形状
- 製品の寸法と、寸法の許容できる範囲
- 幾何公差
- 表面粗さ(必要に応じて加工方法など)
- 製品の材質(必要に応じて表面処理や熱処理など)
- 図面の尺度や投影法など
- 製品の名前と図番
なぜJIS規格が必要なのか
自分では完璧な図面を描いたつもりでも、他の人が見たときにその図面を理解できなければ意味がありません。自分の会社内では当たり前のこととして認識されている記号などでも、他の会社では全く別の意味として使用されていることもあります。会社によって図面に対する暗黙の決まり事が違うのです。
社外の人間にも正確に伝わるようにするには、ひとつひとつを言葉で表現し図面に書き加えなければなりません。このようにしてしまうと、図面は文字だらけとなってしまい理解するだけでも一苦労です。
こんな面倒なことにならないように、図面の中でよく使用される事柄を定義し、図面を描く人と見る人が共通の認識を持てるようにしたものが規格であり、日本の機械製図の場合はJIS規格となります。日本では暗黙の了解としてJIS規格をもとに図面の読み書きが行われています。
JIS規格では、描きやすい図面や見やすい図面にするために、よく使用されるものを記号化しています。幾何公差やはめ合い公差などがその代表例です。
JIS規格以外の規格を使いたい場合はどうすればよいのか
公差の付いていない寸法に対して、社内で作成した寸法公差表を適用したい場合など、JIS規格以外の規格を使いたいこともあると思います。そのような場合には「指示なき寸法公差はこの公差表を使用すること」などを図面に記載することで使用することができます。
JIS規格でも、図面に明記することでJIS規格以外の規格を使用することを認めています。
また、独自に作った記号なども使用することができます。このような場合もその記号の意味がわかるように、図面中か別紙に記載する必要があります。
図面を読むためのヒント
図面に描かれている製品の形状を理解するためには、まず第三角法を理解してどの方向から見た図なのかを確認しましょう。
最初のうちは複雑な形状の図面を見ても、その形状を想像することは難しいかもしれません。そのようなときは実物と照らしあわせて見ることで徐々に理解できるようになっていきます。
また、実物を見て図面を描いてみることでも想像力は養われます。
図面に描かれている記号がわからない場合は、詳しい人に聞いたりインターネットや書籍などで調べたりすることで解決できます。
図面を見慣れている人でも、複雑な形状の図面を一瞬で理解できるわけではありません。(そのような人もいるかもしれませんが・・・)通常は少しずつ理解することで、頭のなかで全体像を想像することが出来るようになります。
図面を読めるようになるための一番の近道は、図面を見ながら同じ図面を自分で描いてみることです。形状が理解できなければ図面を描くことができないので、何がわからないのかがはっきりします。
何がわからないのかがわかるようになるまで図面と格闘してみましょう。